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妄想∞すてーたす

∞の現実ネタを取り入れたBL二次小説を創作しております。主にやすば中心ですが、メンバー全員愛してます。

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ロミオとジュリエット∞やすば

.




「なあ、ロミオとジュリエットって知ってる?」





これまた急に。
ヤスのこういう不可解なとこはいつものことやけど、出てきた質問に俺は持っていた携帯から顔を上げる。





「知ってる。内容も、なんとなくなら」

「有名やしなあ。…今度これの現代版を舞台でさせてもらうねん」

「お前がロミオ?」

「そう。主演やしロミオ」

「ジュリエットでもええんちゃうか?」

「残念、俺はロミオみたいやで」



あっそ。
つまらん会話はもうええわ。
俺にその舞台の話して何が楽しいんやろ。何を聞いてほしいんや。それとも、何か言いたいことでも?

そのままもう一度携帯へと視線を戻すとヤスは慌てて話し出す。


「ロミオとジュリエット、なんであんなことになるんやろうな」

「……………」



またこれ頭がお花畑なんちゃうか?
なんや、俺これに巻き込まれて大丈夫かな。事故らんかな。


「辛すぎるやん。想いあってんのに、誰も理解してくれずすれ違ってまう」

「物語やからな。そりゃあ辛いやろうけど」

「悲劇とも言われてるし、しゃーないんやろうけど、いくら考えてもあんまりやわ」



下向いてるから顔はいまいち分からんけど、一緒になって悲しんでるのは分かる。優しさゆえか。
でも、だから霊に取り憑かれたりするんやで。
優しすぎるのも問題や。





「ただ、一緒になりたかっただけやのになあ」

「……それでも敵対してる国の娘と息子となれば難しいんちゃうか?2人の気持ちだけってゆうのは難しいやろ」

「そうやけど。そんなんなんか納得いかんわー」

「ヤスが納得いかんくても、これが事実やししゃーないんやって。俺らじゃどうしようも出来ひん」




俺の言葉に少しだけムッとして落ち込んでしまった。
どうしてそこまで感情移入しとるんやろ。まだ、役柄が決まっただけで稽古とかは一切入ってないはずやのに。ちょっと早すぎるんちゃうか?



「渋やん冷たいわ。渋やんがジュリエットなら、俺は……2人の未来を諦めたくない」


「…………それは、それ。諦めなかったロミオはジュリエットとすれ違ってしまうんや。だからヤスの気持ちと同じやったってこと」




ちょっと冷たいかもしれんけど、俺がジュリエットなら、ロミオのヤスには生きてもらいたいから突き放すよ。
早く逃げろと、自分を犠牲にしてでも逃がしてみせる。

俺の意見を聞いたヤスは乗り出すように話し出す。


「そんなん、俺が嫌や。渋やんがひとりで傷つくなんか考えるんも嫌。だからいくら突き離されても離れへんよ」


「……なんちゅーワガママな奴や」


「だって……俺にとって渋やんは糧やから。俺の中心やねん。その真ん中がなくなってもうたら俺はあかんから」




俺から取らんとってほしい。

願うように話すヤスが小さく見えた。
いつもより遥かに。
こんな弱いヤスもいるんやな、って。
でも、そう話すヤスの目は真剣で何か俺には理解し難いモノを見据えてた気がした。

知らんでいいんやと思う。

本能からそう思って見て見ぬ振り。
自分の手元をソッと見つめて、拳を作った。



「てゆうか、なんで俺がジュリエットやねん。お前やろ」

「ええ?俺と渋やんやと渋やんやろ。これは譲れん」

「絶対俺の方が男らしいと思うんやけど?自信あるで」

「いや、そこじゃない。決めるんはそこじゃないで」



どこやねん。
心で突っ込んで必死なヤスに笑う。
可笑しくて。
こんなアホみたいな会話を本気でしてる2人が可笑しくて。
俺は思わず笑みが込み上げてきた。




「俺らアホやな」

「え?なんで?」

「分からんヤスはもっと重症なアホやわ」




分からんでええけど。
分からんってことは、本心やろうし。
俺としては嬉しいことやし。
まあ、
本心でそれ言うてるてなったらある意味、痛いけどなあ。

ヤスやし許されるんかな。
お花畑やしなあ。


ポンポンとヤスの頭を叩いて頷く。







「おお、章大。あなたはどうして章大なの?」



「え………あ、オカンとオトンがつけてくれたから…」







真面目に返してくれるヤスに俺はまた笑ってしまう。
おもろいわあ。
好きやわあ。
そういうお前が。



「そうや。みんなから望まれて生まれて来て、章大って名付けられた。お前は章大や」


「え、…うん」


「ロミオでもジュリエットでもない。お前はお前や。他の誰でもない」






だから、どの結末も正解じゃない。

すれ違って?
誰かを守って?
愛を誓って?

どれもちゃう。

しいて言うなら全ての選択肢を選んで尚且つ、まだその先の幸せを願えばええやないか。

ヤスなら大丈夫や。


お前はお前。
俺が認めた安田章大やねんから。





「俺と離れんでもええし、すれ違って死なんでもええ。悩むことなんか何もないわ」


「まあ、そうやねんけどな」


「……やろ?ハッピーエンドで良かったな」


「アホか。まだまだエンドではないから、俺は貪欲にその上の幸せを願ってるんやけど?」





アホや。
嬉しそうに笑うヤスを見て、俺も一緒に笑い合う。



祝福されない愛でも
2人が幸せならそれはそれでいいんじゃないか。

そのまま二人仲良く手を繋げるだけで、幸せなんやろう。

ただ、
喜んでもらえないばかりに無かったことにしようなんて思えるわけもない。




そんなものは本当の愛とは言えない。



どんな困難でも乗り越えてやろう。

そう思えるのが、真実の愛で
一生ものの宝物。



俺にとってはそれがヤスで


お前にとってはそれが俺で。





ただ、それだけのこと。

自分の宝物が、ただ、報われない愛情やっただけのこと。




それだけのこと。

2人が幸せならそんなことどうだっていいんや。






end
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  1. 2014/06/27(金) 20:24:24|
  2. やすば
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ONE,ever since∞倉亮

.








「…………で、それで亮ちゃんがヤスの代わりに俺とご飯?」


「………ん。別に、来んでも良かったやろうけど、お前に悪いやん。章ちゃんが大倉誘ってもうとったから…」





そう言ってお酒をグイッと飲む亮ちゃんに俺は気づかれないように笑う。
声あげて笑ってまうと亮ちゃんの癇に障るやろうから。




「律儀やなあ。…そういう理由があるなら断られても怒ったりせんのに」


「まあ、そうやけど。俺が大倉の立場やったら、気になってしゃーないから。…こんなことがあったよ、って説明も兼ねて」





少し考えながら話す亮ちゃんに、俺も納得して頷く。
確かに。
あんな電話があって、そのまま切られたら気になってしゃーないかもな。怒鳴り声まで聞こえてたもんやから、心配もしたし。


それが亮ちゃんの声となればわけが分からんくて、喧嘩でもしたんかな?って慌ててまう。





「……思ってたより、元気そう?」


「俺?…そりゃ、辛いよ。だってこんなにすばるくんのこと想っとるんやで?想っとんのに譲るとか意味わからん」






「そっか。俺の前やし、我慢しとるんや」


「…我慢とか、そんなんやないけど。カッコ悪いやろ」




じゅうぶんカッコいいと思うけど。

好きな人のために身を引けるなんて、なかなか出来んよなあ。
俺は無理。
自分の気持ちをすべて優先してしまう性格やから、相手の為とかなかなか考えてられへん。



「大人やねえ」


「アホか」




感心したように背凭れに体重預けて首を振る。
そんな俺に亮ちゃんは照れ臭そうに笑ってくれた。


でも、
その顔はやっぱりどこか辛そうで、我慢してるんかな?って気になってしまう。


このご飯の相手が俺やなくて、村上くんやったらどうやったんかな?
横山くんやったら?
先輩やし、相談して、素直に悲しんだりするんかな。
丸やったら、優しさに甘えたりするんかな。



そう考え出すとキリがないのは分かってるけど、どうにも年齢という壁が邪魔だと感じてしまう。
仕方ないのに。
そんなこと、別に亮ちゃんは気にしてないかもしれんのに。




「おい。なんで大倉が暗なっとんねん」

「え…暗くは、ないけど」





亮ちゃんに下から見られて、少しだけ笑われた気がした。
ちょっとした年下扱い。
普通のことやのに今は嫌な気持ちになってしまった。
俺じゃ頼りないんかな?って。



「ごめん、大倉」

「なんで?」

「こんな失恋話されて、楽しいわけがないよな。何をグループ内恋愛しとんねん、って思うよな」


それは、別に…
そこまで出ても先は言えんかった。
確かにこの話を聞かされても気持ち的には楽しいもんやない。
でも、亮ちゃんとこうして飲めてる時間は俺にとって大事な時間やと思う。
2人でゆっくり呑むなんてなかなかない事やから。




「…明日も早いやろ?帰ろか」


「え、いや。俺は大丈夫やで」





俺の言葉を最後まで聞かないまま亮ちゃんはお会計を済ましている。
置いてけぼりな俺は目の前のお酒を一気に呑み干して、ゆっくりと亮ちゃんについていく。




「タク拾って帰れよ~」

「…亮ちゃんは?帰らんの?」


「帰るよ。歩いて帰ろうかと思って」

「やったら、一緒に帰る」





言い切った俺に亮ちゃんは目をパチクリして見てくる。
変な奴とでも思われてんのかな。
それとも、困ったやつって呆れてんのか。



「ええけど、大倉歩きたいん?」

「歩きたい!めっちゃ!」



俺の勢いに亮ちゃんは笑ってくれた。
なんなんお前、ってお腹抱えてくれた。
それと同時に亮ちゃんの目が赤いことに気づいた。


まだ涙我慢してるんや。
辛いのも我慢させて、俺は何してるんやろう。





「亮ちゃん、泣きたかったら泣いてもええよ。夜やし、誰もおらん」


「泣かんよ、俺は」



声めっちゃ震えてんのに、いつまで強がるつもりなんやろ。
何がそこまで亮ちゃんを縛り付けてんの。

大人になるとか、男らしさとかがそういうものなんやったら
俺はいらんと思う。
自己主張して、喜怒哀楽を自由に出せたほうがよっぽど人間らしいから。


昔、亮ちゃんが俺に教えてくれたんやで。




「…泣きたかったら泣いてもええ。怒りたかったら怒ってもええ。けど、それ以上はくよくよすんな。その分がんばれ!………って」


「いつの話してんねん」


「覚えてるんやったら、出来るはずや」




ちょっとした沈黙。
亮ちゃんは下向いたまんま微動だにしない。
泣いてんのかな。
心はずっと、苦しいんかな。




「…ふざけんな」



心配して近づいた俺に、亮ちゃんは声を張る。
泣いてるのかと思いきや怒ってる亮ちゃんに俺はびっくりして後ずさる。



「…お前に分かるわけないやろ。なんやねん、…めっちゃ辛いよ。ずっと好きやってんから!章ちゃんよりもっと前から大好きやったんや!…憧れなんかやない、愛おしいと思うようになって……守りたいって心で誓った」


「……………うん。知ってるよ。亮ちゃんがすばるくん好きなことはみんな知ってる」


「……そうや。みんな知ってた。だから、すばるくんは俺にどう接したらいいか分からんかったんや。それも全部わかってた。だからこそ辛かった」


顔を歪めて話す亮ちゃんは痛々しくて、いつもの亮ちゃんと違ってた。
これがきっと、本音をぶつける弱い亮ちゃんなんやろう。
俺は嬉しくて思わず笑ってまう。



「なんやねん。可笑しいこと一つもないやろ」


「ごめん。可笑しいわけやなくて、嬉しくて」


「俺の失恋した話が?嬉しいって?」


どんよりした空気で俺を睨んでくる。
そんな亮ちゃんに俺は慌てて否定する。




「そうじゃなくて、俺に本音を話してくれたことが」

「はあ?」

「亮ちゃんの想いをぶちまけてもらえた気がして。年下の俺相手に我慢せず語ってくれて…」



俺の嬉しそうな顔に亮ちゃんは眉間にシワを寄せる。
面白くない、と目で訴えてるようで
俺もヤバイかなと目を泳がせる。



「……帰る」

「あ、待って亮ちゃん!俺も」



「……ごめん。情けないな」

「なんで?亮ちゃんはいっつも我慢しすぎやねんで。だからこれで良かったんや」




立ち止まらず歩く亮ちゃんの背中がどこか寂しげで、
俺はただ、受け止めることしかできんかった。


何を言っても正解ではないんやろう。
きっと、
どんな言葉も今の亮ちゃんには届かんのかもしれん。

でも俺の素直な気持ちだけは聞いてほしい。

嘘じゃないこの気持ちだけは
伝わればいいな、って願いを込めて一息つく。






「俺は、今日来てくれて嬉しかった」



「…………ん、そっか」



「亮ちゃんと向き合えた気がして、ひとりで舞い上がってる」



「………………おう」



「すばるくんのことは残念やったけど、………俺は良かった、って思ってる」



「…はあ!?」



思いっきり勢いよく振り返った亮ちゃんの目を見て緊張が高まる。
怒ってる。
そりゃあ、失恋したことに喜ぶなんて怒るのは当たり前や。
でも、こんなこと言うてもうたからにはここで終わるわけにはあかんやろ。







「ごめん。勝手なこと言うて。でも、聞いてほしい!」




「…なんやねん」





「………俺じゃ、ダメかな?」







言い切った俺はきっとめっちゃカッコ悪い。
震えて泣きそうで、そんな顔で訴えてる。

でも、
亮ちゃんが教えてくれたんやろ。


素直になれ、って。
喜怒哀楽を表に出したらええ!って。

だから
こんな時やけど
こんな時やからこそ
自分の気持ちには嘘ついたらあかん気がして。




「お前、本気なん?」


「え、うん!めっちゃ本気やで」




立ち止まってため息をつきながら話す亮ちゃんに俺は頭が上がらず、目をぎゅっとつむってしまう。
怒られるんかな。
こんな時に、って。




「アホやろ」


「…かもしれん」


「でも、嬉しい、よ?」


「…ほんまに?」




照れて笑う亮ちゃんが可愛くて、
俺も満面の笑みでガッツポーズしてしまった。



こんなこと
言うつもりなんて
言う勇気なんて
全くなかったのに…

言って良かった。


自分の背を、自分で押せて
こんなに嬉しいことってないやろ。







「はよ、もう帰んぞ」


「……ええ!?返事は?」


「図々しいわ。今の俺はすばるくん一筋や。章ちゃんが泣かしたりでもしたらすぐ奪いに行ってやる。ただ、……あとはお前次第やろ」





それだけ言うて前を歩く亮ちゃんはやっぱりカッコよくて
俺なんかよりずっとカッコよくて
俺はまた惚れ直してしまう。


すばるくんを好きやって話す亮ちゃんの言葉は真実やし、
今なんか言うて振り向くような簡単な男じゃないってのも分かってるつもり。

でも、こんな機会でもないと言えへん気持ちやったから
こうして今日がんばれて良かったと思ってる。



ただ、
俺もそこで満足できる男ではないし
自分に正直な性格やから
諦めるつもりも
亮ちゃんと誰か他の人との幸せを願うつもりもない。



俺が好きなのは亮ちゃんで

幸せにしてあげたいとも思ってる。




「亮ちゃん。たぶん俺しつこいけど、がんばるから……待っててほしい」



「おう。せいぜい頑張れよ」





そう言って笑う亮ちゃんは


俺の好きやと思う亮ちゃんで、




これからも

ずっと傍で見守りたいと思うような笑顔やった。




end
  1. 2014/06/19(木) 23:00:35|
  2. 倉亮
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『ONE』Ⅵ∞やすば

.








今頃、渋やんは亮と会えてるかな。
伝えたいことちゃんと伝えられてるんかな。


心配や。
でも、きっと亮は優しいし、幸せにしてくれるやろう。
だから、
俺はもう前に進まなあかん。

いつまでも渋やん言うてる場合やないな。
大人になって、強くなって、優しくなって、
誰よりも2人を祝福せなあかんと思う。



2人のことが好きやからこそ、そうすることが一番みんなのためなんや。
分かってるから、泣くのはもうやめよう。




………ってことで、
大倉でも誘って飲みにいこっかなー


trrrr…trrr……


「あ、大倉?急にごめんなあ………っ!?…………亮?」







元気良く出た大倉に俺もどこかホッとして話していた矢先、前から亮がこちらに向かって歩いてくる。


なんや、空気が
思ってた感じと違うくて、俺は大倉に「ごめっ、ちょっと待ってな」
と伝えて携帯を持ったまま亮に近づいた。




「……………亮?どうしたん?」

「………………」

「亮……」


目が真っ赤で、俺を見る目がどこか冷たく感じる。
俺をジッと見つめて眉をしかめた。
その顔に俺も息を飲んでしまう。




「なあ、亮。…渋やんは?」

「…………………」

「渋やん、どこ?一緒やったんやろ?」

「…一緒やった。さっきまで」





それだけ呟いて、俺の手に握られた携帯を見つめる。





「ヤスは、ここで何してるん?」

「…俺は、大倉に電話してて……。それより、渋やんは今っ……」

「なんで………」

「………亮」

「俺のがこんなに好きやのに、俺じゃダメなんや。
やのにお前は何してんの?
気付けよ!すばるくんのこと想うなら………」




一気にまくし立てられた。
電話から大倉の心配した声が響いてる。
でも、
今の俺はその声よりも、
亮のその言葉に心が掴まれてしまった。




何を言ってるん。
渋やんは、亮に気持ちを伝えに行ったんやないの?
だから俺はそれを見送ったんやんか。

でも、そうじゃなかった。
俺の勘違い。
俺が気づいてあげれなかった気持ち。

じゃあ、今、渋やんはひとりで何して…………




「亮、……渋やんは?ひとりなん?」

「……今の俺じゃ傍におってあげれへんから。居たくても無理なんや」



グッと亮が俺の胸ぐらを掴み睨む。
それに俺は抵抗などする気もなくされるがままで見つめ返した。

亮の気持ちは分かる。
言いたいことも、したいことも。
ほんまは思いっきり俺を殴りたいんやろう。
やったら俺は殴られた方がいい。




渋やんを傷つけたんはきっと俺やから。





「亮、…いいよ」

「…………………」

「…………………」




亮の俺を掴む手がスルリと抜ける。
抜けたと同時に身体の力まで入らないようで、ぐったりと項垂れた。



「……携帯…」

「え?」


下を向いたまま亮はボソッと低い声で呟く。それと同時に俺の手から携帯が取られ、そのまま亮は携帯越しの大倉へと話しかける。

その一連の動作を呆気に取られながら俺は見つめてしまった。
わけが分からなさすぎて、見つめるしか出来んかったんや。




「…………おう、大倉か?なんや章ちゃんが用事あるらしいし、俺と飯いこうや。……うん、そう」


「………亮?」


「おう、それじゃ、また」




プー プー プー


切られた音だけが響く携帯を静かに返された。
俺は渡されるがまま受け取り、通話終了の画面を見て亮を見る。

目があった。

…………………

亮は、ほんまに渋やんが大好きなんや。
目を見ただけやのに、その想いの強さが分かる。
目力がとかそんな簡単なもんやない。
秘められた想いだけが奥で燃えてる。
俺には分かる。
わかるよ、亮の気持ち。
だからこそ殴られても仕方ないって腹括ったのに、…優しいな。
優しすぎて切ない。

でも、
だからって、
……譲れるもんでもないよな。



「亮、ありがとう」

「早よ行けや。どうにでもなれ」

「……うん。どうにでもなるよ」



冷たくあしらう亮に心で微笑む。
不器用で、素直やないのに、優しすぎて、あったかい。




「………章ちゃん」





「ん?」






「………泣かしたら許さんからな。幸せにしてあげて。俺の大事な人、大事にしてあげて。守れんかったら、奪うから」







怒るように放つ亮の言葉は重くて、熱くて、俺の背を押してくれるようやった。
俺は頷いて亮に背を向ける。

さっき見送った渋やんの背中が脳内をよぎる。

小さい背中が寂しげに去って行く。

たくさんの思い出が詰まってるあの姿に、俺は別れを告げた。
俺やない誰かがきっと幸せにしてくれる、と勝手に決めつけて。
それが渋やんの幸せかも考えずカッコつけてた。




情けない。





誰よりも好きやとか言いながら
俺はその想いに気づけんかったんや。

渋やんは、俺の言葉をどんな想いで聞いとったんやろ。
なんで他の男に譲ろうなんか思ったんやろ。
絶対に、残るのは後悔しかないのに。


泣きたくなる気持ちを抑えて、がむしゃらに駆ける。
危ないと思いつつ、猛スピードで探す。



角を曲がるたびにドキドキする。
心臓が跳ねて、

曲がった先に見つけた姿に頭が真っ白になった。










「渋…やん」




「………………」






蹲ったまま動かない。
頭まですっぽり、膝を抱えてまるまってる姿は、
いつもの凛としたカッコいい姿ではなかった。


弱くて
儚くて
繊細な


俺の知ってるいつかの渋やん。





ONEという楽曲を一緒に作り上げようと声をかけた時の渋やんがそこにはいた。





もう大丈夫や、なんて
誰が言うたんやろうか。

歌えば強くなれるなんて
そんなことあるわけなかったのに。






「…渋やん」

「………………」






隣にソッとしゃがみ込む。
覗き込んでも顔は隠れたままで、何も伺うことができない。
閉ざされたみたいで、俺を遠ざけるみたいで、胸が痛くて軋んだ気がした。





「冷たい雨に…何度も打たれ…」




疲れ果てても

陽はまた登る。







小さくぽつりぽつりと口ずさむ。
この曲を作った時は本当に渋やんのことしか頭になかった。

周りのことなんか気にもせず、べったり渋やんに纏わり付いて、いろんな人にたくさん迷惑かけたやろう。

それでも、渋やんと過ごす些細な毎日が楽しくて
渋やんのことが大好きやと心から叫ぶことができた。





でも、いつからやろう。

周りの気持ちまで考えて、自分を偽り始めて、渋やんを傷つけてた。




心とは無関係に季節は巡り

懐かしく新しい空気の中

強く信じ前に突き進むことで

すべてが生まれ変わる






今からだ






手を伸ばせ掴み取るんだ
目を凝らして奪い取るんだ

戦うこと恐れず
心からぶつかれば




その先で花は咲くだろう







「ごめんな、渋やん」

「…………」

「渋やーん。……なあ、あんなー」


顔をあげない渋やんの頭を優しく撫でてやる。
困ったなあ、って微笑んで
撫でる手を言葉も構わず続ける。







「…渋やんに言い忘れとった」

「……………」


「俺な……渋やんが好きやねん」




俺の言葉は聞こえてるのか、肩が少しだけ震えた気がした。
そんな渋やんが可笑しくて微笑む顔がもっと緩くなる。





「渋やんがいい。やっぱり、好きやから……」


「…………さっきも、聞いた」






返された言葉に渋やんを見やる。
でも、頭は少しも動かさず目だけがチラリとこちらを盗み見た。


その動きに俺の手は止まる。


渋やんを抱きしめるように肩に手を伸ばして引き寄せる。





「…好きや。誰よりも、俺が1番渋やんのこと想ってる」

「……………っ」

「だから、渡したくない。気が変わった」







暴れずに、逃げ出さずに、
俺の腕の中に収まるってことは、嫌われてはいないんやろうって思う。

思うけど、
………自信はない。





渋やんが何を考えてるかなんて、わかりっこない。
でも、それでも、好きやから
わからんから、って諦められる気持ちでもないからぶつけるしかない。




亮がせっかく背を押してくれたのに、
ここで引き下がって帰れへんやろ。





「渋やん。……愛してます」


「……………」


「渋やんが俺のこと想ってなくても、俺は一生思い続けます」


「……………」


「これだけは信じてほしい。だから…」







グッと腕を伸ばされて突き放される。
それと同時に見つめ合う形になった。

真剣な目が俺を見る。

迷いがないのに、不安そうで
強気やのに、泣きそうで



俺はその目を見つめ返すしか出来んかった。







「…渋やん?」

「……次の…」

「…………………」

「次のライブでONEを歌いたい」

「え?…うん、いいけど」

「……次で、最後にする」




その言葉に胸が締め付けられた。
なんか、巣立って行く子供みたいで、俺が辛くなってしまった。
でも、
渋やんの顔はそんな気持ちとは裏腹に覚悟を決めた顔で、俺は頷くことしか出来んかった。






「もう、過去は忘れなあかん、やろ」


「…………」


「もう、1人やない……から」





チラリと見られてキョトンとしてしまう。
そんな俺に渋やんは怒って立ち上がる。




「ええこと言うたのに、伝わっとらん!」


「…え?いや!……わかってるよ!」





俺も追いかけるように立ち上がる。
勢いで掴んでしまった腕をゆっくりとおろして、もういっかいちゃんと向き合う形になった。



「渋やん」


「なんやねん」


「俺が傍におってもええ?」


「だから、お前がおるから、1人やないやろ!言うてるやん!」





大きな声で告げられたそれは、まるで告白のようで、俺の心はいっぱいになった。

恥ずかし気もなく言いきった渋やんは、いつも以上にどこか男前で
俺が頭を抱えたくなる。



「わかった。最後にしよう。…歌い切って、前を見よう」


「うん。今なら大丈夫。…亮のおかげでもあるから」








亮という名前に俺は楽しくない気持ちでいっぱいになってしまったけど、渋やんにとって亮も大事な人やから
俺にとっても大切なメンバーやから


そんな渋やんに俺は微笑んだ。








「俺だけやない。渋やんには亮もいるし、みんなもいる」


「うん。もう大丈夫や」





そのまま歩き出した渋やんに慌ててついていく。
きっと俺の気持ちが大きすぎて、これからもこんなことがたくさん起こるやろうけど


俺はいつだって君に翻弄されながら生きていくんやろう。







「ヤス。俺にとって、一番大事なんはお前やから」








こうやって。
俺はこれから何度だって驚かされる。



それでも俺は、
君と隣り合わせで笑い合えたらって想うから





「よかった。俺が一番で」




「今のとこな」





「大丈夫。俺がしつこいから」






離したくないから。
離れたくないから。

奪われたくいから。
失いたくないから。



一生、隣で笑っててほしいから。






「………渋やん。ほんまに俺が、傍におってもええ?」




「しつこい。…俺が好きなんやったら傍で見張っとけ 」







「ん。そうやな」






飛びつくように抱きついて腕に力を込める。
たくさんの愛が渋やんの心を埋め尽くしますように。
俺の愛で満ち溢れますように。
願うように目をつむる。




今までの思い出が蘇るたびに目の奥が熱くなった。








ONEを作った時の姿が今でも鮮明に思い出せる。


渋やんが俺に渡した歌詞は辛くて、でもどこか希望もあって、
これが渋やんの心境なんや、ってはじめて理解できた気がした。




俺はひとり夜の海を見つめたまま
渋やんのことだけを考える。




風に乗って聞こえて来る波音と
渋やんの心の叫びが重なって
今のONEという楽曲が出来上がった。





ONE



ひとりぼっちやった渋やんが

みんなで輪になり


俺と一つになる。





渋やんはきっと、ひとり、という意味で捉えたかもしれない。

でも、俺が込めた想いは





「もう、ひとりじゃないよ」





って伝えたかった。





遠回りしたけど
たくさん傷付けたけど

その分俺たちは幸せにならなきゃいけない。




「幸せになろう、渋やん」


「………ん。…もう、幸せやけどな」




笑いあって、
おでこくっつけて、

この世の幸せを願うなんてそんな大層なことは言えへんけど、


笑いが溢れる毎日を過ごしたい。

願わくば俺たちに関わる全ての人がそんな日を過ごせますように。







……きっと



その先で







花は咲くだろう。






その想いも込めて


この歌を今日も、みなさんに届けます。





「……聴いてください、



ONE…………」







end



























  1. 2014/06/11(水) 21:17:57|
  2. やすば
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